いよいよ骨組みへ外装を施していく。まずはデッキ(甲板)から。目につくところだけあって丁寧な仕上げが要求されることもさておき、実船をいかに再現していくかという深い世界に突入することになる。このあたりは実船の知識や帆船模型製作における基本技巧に関する情報が要求されるところだが、こだわりすぎていても前に進まないので、キットの取説にて指示されているものを参考に現時点でわかる範囲でカスタマイズしてみた。
デッキ材
デッキ材には「ラミン(ジンチョウゲ科/広葉樹)を用いる。白色で硬質、そして安価にホームセンターなどで販売されておりDIYによく用いられる。きれいな色なのだが少々インパクトに欠けるような気がしたので仕上げに塗装することにした。
帆船模型を作っていると木材に関する関心が湧いてくる。今回の模型製作を通じて利用した木材から少しずつ調べていこうと思う。よく参考にさせてもらってるのが「木材博物館」さん。科目や性質、原産地や利用用途べつに豊富な種類が整理されており大変勉強になる。
材料カットと貼り付け
工程としてはデッキ材を基盤に貼っていくだけなのだが、さっそく実船再現の観点で悩み事が発生する。
①デッキ板の長さをどうするか
デッキ板の長さは30フィート(9.2メートル)から長いものでは40フィート(12.2メートル)以上のものがあったようである。今回のキットは1:90スケールなので板材の長さを9~13センチで使うことになる。ところが取説によると板材の長さは6センチでと指定がありやや短めの設定となっている。実船がどうであったか調べようと試みるも、こんな細かな情報にたどり着ける気配が全くなく諦めることに。。。結局、取説に従い6センチ(実寸法で5.4メートルの設定)とした。
②バットの位置をどのように配置するか
デッキ板の切れ目をバットという。バットはデッキビーム上に配置しそこで釘付けされる。ここでバットの位置が同じデッキビーム上に横並びになるのかというとそうではなく、そこにはいくつかの規則があるようだ。下図にしめすのは、the 4 butt shift system と呼ばれるもので同じデッキビーム上にバットがある間隔がデッキ4枚分であるパターンで軍艦として建造された大型船に使われていた。
さて、今回のサンマルタン号はどうであったか。例によって実船がどうであったか知ることはできない。またデッキビームがどこにあるのかもわからない(模型製作上のフレームがあるがこれは実船のデッキビームとはまた違うものだと思われる)。そこでこちらもとりあえず取説に従い隣のデッキと交互に板材の半分の長さ分オフセットさせ配置することにした。
なお、デッキ上の開口部であるハッチ幅内には継ぎ目がないようである。このあたりの再現も悩むところではあったが、この部分だけデッキ長さが他の部分より長くなるためイマイチ整合性が取れないような気がした。そもそも理由もわからないため今回はこの辺りを無視することにした。
③バットとコーキングをどのように表現するか
バットの配置はきまった。ではこのバットをどのように表現するか。取説では一枚板を貼り付けたあとデッキ板長さ(今回は6センチ)の間隔で鉛筆で線を描きいれるというものであった。構造をお絵描きで済ますのはさすがに不満だったので所定の長さにカットし一枚ずつ貼り付けていくことにした。おおよそ200枚程度になったかと思う。同じ作業の繰り返しは大変であるが、なんとか頑張る。
デッキ張りの際の一工夫として「コーキングの表現」がある。実船では防水のためにデッキの継ぎ目にローブ繊維をほぐしたものを詰めその表面にタールを流し込んでいた。これを表現するため所定の長さにカットしたデッキ材の端面に鉛筆で黒く着色しておく。これが貼り付けた後にコーキングの表現となるのである。
④釘跡をどのように表現するか
デッキを固定する釘跡をどのように表現するのかもいくつか種類がある。
- 爪楊枝など木を植えこむ
- パイプ端面で押し跡をつける
- ドリル穴に木工パテを埋める
- 鉛筆の先端を押し付ける
爪楊枝を埋め込む手法は何とも魅力的ではあったが下穴をあけるドリルを持っていなかったのと、手間のかかりが膨大な気がして今回は断念した。代わりに鉛筆の先端を押し付けて表現した。遠目で見る分には雰囲気がよく出ているが近くでみるとやはりお絵描き感がでるので次回作ではもう少しこだわりたいところだ。
デッキ張りは様々な要素が含まれる奥深い工程である。知識不足とまずは一作仕上げてみたい気持ちが先行し妥協点も多くあるがとりあえず一通り作り上げることができた。
次回は着色をし船体に固定していきます。
つづく。
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